わたしと猫の特等席 デビルサバイバー2 鳥居純吾×主人公
オフA5 P20
ダイチ東京ルート大円団前提。
忙しくてジュンゴに会えず拗ね気味の主人公とそれを宥めたりフォローするダイチ。そしてちょっと鈍かったジュンゴの話。



「ジュンゴの中ではきっとじゅんごが一番なんだろうな……」
「文字通り猫っかわいがりだしな……」
 最近の純吾は常にじゅんごと一緒にいる。一度危ない目に遭わせないよう別れて、脅威が去った後すぐさまじゅんごを迎えに行ったのも記憶に新しい。その時も優輝は微妙な顔をしていた。
「自他共に認められてる! もうおれはダメだ!」
 頭を抱えて優輝が突っ伏した。まるで世界が終わるような嘆きっぷりに「落ちつけって!」と大地が宥めた。
「どうしてそっからそんな考えに行き着くの? 白鳥白鳥!」
「ジョーみたいなこというなよな……」
 言いながら優輝は両手で顔を覆った。指の間か「もーいやだ」と弱音をため息と共に零す。
「オレばっかりから回っててさ……バカすぎる。ジュンゴはじゅんごとラブラブすぎるし」
「いーじゃん、それが恋の醍醐味ってやつなんだしさあ」
 丸まった背中をぽんぽん叩いて慰める大地に「それを味わったことのない大地に言われたくなーいー」と優輝は言い返した。
「うっわひっで! 本当だけど、そこはオブラートに包んで!」
「水に溶かしてやるよそんなのー。それよりも慰めろよお前はだからダイチなんだよ」
「わかったから泣かないの! はいはいよしよし」
 伏せていた顔を上げぎっと睨む優輝へ大地は身を近づけ、背中を大きく擦った。ついでに耳つきフードを埋もれていたマフラーの内側へ引っ張りだして頭にかぶせる。これなら泣いてるところを誰かに通りかかれても分からないだろう。逆に目立ちそうな可能性には目を伏せておく。





──────────────────




「……静かだな」
 ぽつりとロナウドが呟いた。背中に背負った優輝を起こさないよう背負い直し「名古屋も同じような感じだったよ」と辺りを見回す。
「しばらくは平穏が続くだろうが、直に騒がしくなるだろうな」
「へ……? 復興とかで?」
「それもある。しかしどんな時でも悪どいことを考える奴はいるんだ。復興には時間がかかるだろう。だから俺は俺のできることをしようと思ってな」
 有志を募り治安を守るための部隊を作りたいのだとロナウドは言った。
「三都市を結ぶターミナルや地下の列車を使った方が連携もとりやすい。だから峰津院と迫に意見を聞いてもらおうとここまで来たのだが……思わぬ拾いものをしてしまった」
「はは……。にしてもちゃんとやらなきゃいけないこと考えてるんだな、ロナウドも。ヤマトとかあんなに嫌ってたのに、今じゃこうして意見とか言い合ってるし」
「もうこの世界は誰にも管理されないからな。ならば自分たちで考え動かなくてはならないだろう? いがみ合ってても意味はない。ならば助け合った方がよほど有意義だ」
 ロナウドがふっと笑った。
「困ったときは助け合い、それぞれの力に見合ったことをする。平等でも実力でもないが、こうして残った世界で生き抜くことで新たな答えが見つかる。俺は優輝くんと最後まで戦って教えてもらった。出来るならこれからも共にいたいものだな」
 常にはない微笑みを浮かべるロナウドに、大地はぎくりとした。優輝に対する表情は他には誰にも見せない。さっきの純吾への気持ちを吐き出す優輝のように。
「ロナウド……アンタもしかして……」
「おっと、そこから先は言わないでくれよ?」
 先手を取って言葉を遮ったロナウドは悪戯っぽく笑った。






──────────────────



「ジュンゴ、優輝寂しがらせてた……?」
 前まで一緒に笑いあっていたのに。その心の奥では何を抱えていたんだろう。純吾は最後に会った日はいつだったか思いだそうとした。そしてその日からかなり時間が経っていることに愕然とする。振り返ってみればポラリスを倒してから、世界の復興に忙しさから、ろくに顔を合わせていなかった。
「ジュンゴはじゅんごがいたから寂しくなかった。けど、優輝はジュンゴがいなくて寂しかった?」
 純吾は床に膝を突いた。眠り続ける優輝にそっと手を伸ばす。頬に触れる寸前、躊躇した。板前である純吾の手は水をよく扱う職業柄荒れている。がさがさの指で触れたら気持ちよく寝ている優輝に不快を与えてしまいそうで、触れるか否かのところで指先が戸惑った。
「……んん?」
 ぎゅっと瞼を一瞬強く瞑り、優輝の目が薄く開いた。純吾はとっさに手を戻す。横切る影に優輝は寝返りを打って、見つけた純吾にふにゃりと幼い笑顔を上らせた。
「あ……ジュンゴがいる」
 うれしいなあ。微熱と眠気から舌足らずになった声で言う優輝はとても嬉しそうに笑った。
「最近ずっとあえなかったからさみしかった」
「優輝、ジュンゴに会いたかった?」
「あいたかったにきまってるだろ。こうして今夢に見ているぐらい……あいたいよ」