「……お前さ、気づいてねえだろ。さっきから爆弾発言してばっかなの」
「は――って、え……?」



SMDS
11/3発行予定 P56 オフA5 600円
東京鬼祓師 壇主 R18
女装七代にあんなことやそんなことをする壇。そして墓穴を掘ったりマゾっ気を見せたりする七代のエロ本です(見も蓋もない)
ちなみにタイトルの意味はすごく(S)目にいい(M)壇(D)主(S)本の略です。
表紙をひさおさんに描いていただきました!ありがとうございました!

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Simple

「……やっぱりおれって、大袈裟ですね」
「……ん?」
 燈治が子供をあやすように叩いていた手を止めた。ゆっくり伸ばされた七代の手が燈治の学ランの、裾を引っ張る。
「さっきまですごく不安だったんです。……けど、壇が来てくれたから、そういうの……全部なくなり、ました」
「……」
 最初、七代が何と言ったか、燈治は理解しかねた。しかし頭の中で反復していくうち、口元を手のひらで隠す。
 ここでに殺し文句とは。だから七代の隣は油断ならなくて、誰にも譲りがたくなる。
「……馬鹿だな、お前は」
 燈治は七代の頭を撫でていた手を、そっとその肩へ滑らせた。
「俺が来るぐらいでなくなる不安ならよ……もっと早く呼べって」
 もう片手で七代の顎を持ち上げると、大した抵抗もなく薄目に化粧された顔が燈治の方を向いた。
 燈治は首を少し前に屈める。
 男にしては柔らかめな七代の唇が、燈治のに触れた。
「……ん」
 ただ表面を合わせているだけのキス。しかし、七代は過敏に肩を竦めていた。
 唇を離し、もう一度口づける。今度は固く閉じた唇を舌で舐め、ちゅ、と湿った音がこぼれた。


「だ、壇に触られるのは嫌いじゃ……ないですよ。でもやっぱりこう、時と場所を考えてですねえ……。で、ちゃんと前もって言ってくれれば」
「……」
 その場しのぎの思いつきで言っているような七代に、燈治は少し思案し尋ねた。
「なぁ……それってよ、例えばどんな時だ?」
「そうですね……」
 七代は腕組みをして考えた。
「やっぱ完全に二人っきりの時ですよ。前の洞はどうしたって鍵さんと鈴がいるわけですし。白だって札の姿の時がありますからねえ」
「……場所ってのは?」
 続けて聞く燈治に、深く考えていない様子で七代は答える。
「んー、静かな見つかりにくい場所だったらいい、かも。あ、もちろん洞は却下ですから。もう、あんな恥ずかしいのはゴメンです」
「……で、二つ条件がそろったときにヤりたいって言えばいいのかよ」
 さらに付け加えた燈治に、七代は「そうですねー」とこくこく頷いた。
「まあ、それだけ安全だったら、いやとは言いませんよ、おれだって」
「……」
 はあ、と燈治は溜め息を吐いた。そして後頭部を掻き「ここまで簡単だとなんか怖えな」と呟く。
「はい? 何が簡単なんですか?」
 どういう状況か把握しておらず、七代は首を傾げた。何も疑っていない無防備さに、燈治は頭を抱えたくなる。


「定番って……何のだよ」
「何って……エロほ――」
「馬鹿か」
 加減もせず、燈治は七代の頭を叩く。
「何で叩くの? エロ本ぐらい、男だったら一冊ぐらい持ってたっておかしくないじゃないですか。おれはそれぐらいで怒ったりしませんし」
 叩かれた部分を押さえながら七代は言う。仮じゃなくても付き合っている男の前で。
「だから、そういう問題じゃなくて……」
 言いかけ、止めた。口にしても、それこそしょうもない。
 舌先まで出かけた抗議を飲み込み、燈治はベッドに投げていたシャツを掴んで七代の頭に被せた。
「おら、とっとと着替えろっ。女装が嫌だから家にきたんだろ」
「それは……そうなんですけど」
 被さったシャツを膝の上に置き直し、七代は女子制服の上を脱ぐ。もう何度か着たお陰でもう手慣れたものだ。するすると胸元のスカーフを抜き取り、左脇のチャックに手をかける。
「けど?」
 煮えきらない言葉に、床に胡座をかいた燈治は尋ね返した。
 上を脱ぎ捨てた七代が借りたシャツに袖を通して言う。
「もし、女装のことがなくたっておれ今日……」
 言い淀み、七代は口を尖らせた。
「今日……壇の家に行きたいってお願いしようかと……思ってたんですよ…………?」